陛下「苦労されて作ったお米であろう」

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 東京電力福島第1原子力発電所がある、福島県広野町は原発事故があった2011年春、町内の稲作農家に対して、その年の稲の作付けをやめるように勧告した。

これに反発したのが、無農薬栽培の有機米を生産している「新妻有機農園」の経営者である新妻良平さんだった。稲作仲間とともに、2011年産米の生産を目指した。しかし、この年の収穫米は、福島県が実施した生産量全部の「全袋検査」の結果、セシウムを含むものが多少出たのだった。

翌年は「全袋検査」をすべてクリアした。だが、福島県産というだけで市場では買いたたかれた。他県産と比べて約6割の水準のものもあった。新妻さんと仲間たちは、こうしたイメージを払しょくする方策がないか、喧々諤々の論議を重ねた。

2013年米を収穫すると、霞ヶ関の官庁の食堂に無料で送って、とにかく味をみてもらうことにした。送り先には、宮内庁も含まれていた。

現在の上皇、上皇后陛下はこのことをお聞きになって、「苦労されて作ったお米であろうから、自分たちも少しいただこうか」と希望された。この米のご飯が、両陛下の食膳にのぼったのは2013年11月26日のことだった。

宮内庁の食堂でも、翌日からおにぎりの無料サービスが始まった。

両陛下が広野産の米を召し上がった話が、メディアに流れると、生産者の名前がわからないので、広野町への問い合わせで、役場の電話は鳴りやまなかった。取材の要請ばかりではなく、自分たちも食べてみたいという市民からの問い合わせだった。

新妻さんは、その日のことをいまも忘れない。

特別純米酒「鶩(あひる)」の誕生

 原発事故によって失墜した、福島県産米のブランドの復活を考えた、新妻良平さんの次の挑戦は、広野産米を使った酒の製造だった。両陛下がご飯として召し上がっていただいた翌年、地元の酒造元を訪ねると、山形県に避難して現地で製造をしていることがわかった。

「地元の酒造元を勇気づけるきっかけにもなる」と新妻さんは考えた。経営している「新妻有機農園」は、アヒルに田の雑草を食べさせたり、田を動き回ることによって土に酸素が供給されたりするのが特徴である。

山形県に避難した地元の酒造元に製造を委託した、酒は「特別純米酒 初代鶩(あひる)」と名付けた。「新妻有機農園」の米のファンは、震災前、全国にわたっていた。そうしたファンたちに新しい酒の注文を受け付けることにした。

酒の販売には、免許が必要なことから、新妻さんは翌年に免許を取得している。「新妻有機農園」の産物は、米、酒からアヒルの燻製や自家製の無添加味噌などに、いまも広がっている。有機農法を学びに、東京などの大学生もボランティアも参加するようにもなっている。

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